企業のネット炎上対策などを行うブランドセキュリティ事業部に所属していた際、たった一度の不適切な投稿が、企業の信頼を大きく損なう場面を数多く目の当たりにしてきました。
SNSは強力な武器ですが、使い方を誤れば自らを傷つける諸刃の剣にもなります。
そこで今回は、研修講師の視点から、これだけは絶対に避けるべき「企業アカウントのNG投稿」をワースト5形式で解説します。
【この記事の結論】企業SNSで避けるべきNG投稿 5つの鉄則
- 「内輪ノリ」は禁物
顧客を置き去りにする身内ネタや専門用語の多用は、疎外感を与え、ファン離れを招きます。- 「不確かな情報」は発信しない
善意からでも、事実確認が不十分な情報の拡散は、企業の信頼を根底から揺るがします。特に生成AIによる偽情報には注意が必要です。- 「権利侵害」をしない
Web上の画像や音楽の安易な無断使用は、著作権侵害にあたります。従業員や顧客の顔出しにも必ず許諾を得ましょう。- 「差別・偏見」をなくす
悪気のない「無意識の偏見」が透ける表現は、多くの人を傷つけ、深刻な炎上につながります。- 「非常識・不謹慎」な投稿は絶対NG
災害・事件時の配慮を欠いた投稿や、従業員の悪ふざけは、企業のモラルが問われ、再起不能なダメージを受けます。

ワースト5:顧客・ユーザーへの配慮を欠いた「内輪ノリ」投稿
「面白いと思ったのに、なぜか反応が悪い…」その原因は、投稿が「内輪ノリ」になっているからかもしれません。企業アカウントの投稿は、常に不特定多数の、様々な背景を持つ人々に見られているという意識が不可欠です。
「ウケる」と思ってない?身内ネタや業界用語の乱発
社内イベントの過度な報告や、一部の社員にしか分からないニックネームでの呼びかけ、業界の専門用語を解説なしに使うこと。これらは、投稿者側に悪気がなくても、多くのフォロワーに「自分たちには関係ない」という疎外感を抱かせてしまいます。
私がブランドセキュリティ部門にいた頃、あるBtoB企業が良かれと思って投稿した、社内でのあだ名を使った和気あいあいとした投稿が、「顧客を無視している」「馴れ合いが気持ち悪い」といった批判を呼び、エンゲージメントが著しく低下したケースがありました。
フォロワーは企業の「仲間」であると同時に、厳しい目を持つ「顧客」でもあります。この距離感を間違えると、ファンを失うだけでなく、「顧客を軽視する企業」というネガティブな印象を与えかねません。
対策:常に「第三者の視点」を意識する投稿フローを
内輪ノリを防ぐ最も効果的な方法は、投稿前に「第三者の視点」で客観的にチェックするプロセスをルール化することです。具体的には、以下のような対策が考えられます。
投稿前チェックリストの例
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| ターゲットの明確化 | この投稿は、設定したペルソナに響く内容か? |
| 用語の平易化 | 専門用語や社内用語を、解説なしに使っていないか? |
| 文脈の確認 | この投稿が、会社のことを全く知らない人にも誤解なく伝わるか? |
| 不快感の有無 | この表現で、誰かを不快にさせたり、疎外感を与えたりしないか? |
| 複数人での確認 | 担当者以外の、異なる視点を持つ複数人で内容を確認したか? |
特に「複数人での確認」は重要です。SNSに慣れている担当者ほど、無意識に感覚が内向きになりがちです。投稿ボタンを押す前に、必ず自分以外の誰かに目を通してもらう体制を構築しましょう。

ワースト4:事実確認が不十分な「不確実・誤情報」の拡散
企業アカウントの発信は、多くの人にとって「公式情報」と見なされます。その一言の重みを理解せず、不確かな情報を発信してしまうことは、信頼を根底から揺るがす非常に危険な行為です。
「良かれと思って」が命取りに。善意のデマ拡散
「少しでも誰かの役に立てば」という善意が、時としてデマの拡散に加担してしまうことがあります。例えば、災害時に「〇〇に救助が必要な人がいる」といった不確かな安否情報をリツイートしたり、健康に関する科学的根拠のない情報を「新常識」として紹介してしまったりするケースです。
特に2025年以降、生成AIによる精巧な偽画像やもっともらしい嘘の情報が急増しており、これをファクトチェックせずに投稿してしまうリスクは看過できません。企業がデマの発信源となれば、「情報の真偽を確かめられない、信頼できない企業」というレッテルを貼られ、その後のどんな情報発信も色眼鏡で見られてしまいます。
対策:一次情報と公式発表を徹底。不明な情報は「発信しない」勇気
情報の正確性に少しでも疑問がある場合は、投稿しない。この基本姿勢を徹底することが何よりも重要です。情報の「裏取り」を必ず行い、信頼できる情報源にあたるプロセスをマニュアル化しましょう。
- 情報源の確認
発信元は誰か?公的機関か、信頼できる報道機関か、個人の発信か?- 一次情報の参照
元の論文や統計データ、公式発表など、加工されていないオリジナルの情報を確認する。- 複数ソースでの検証
一つの情報だけを鵜呑みにせず、複数の異なる情報源で内容が一致するかを確認する。
例えば、総務省は災害時における偽・誤情報への注意喚起を行っており、企業担当者もこうした公的機関の発表を常に確認するべきです。総務省の「偽・誤情報対策」に関するページなどは、平時からブックマークしておくことをお勧めします。
ワースト3:著作権・肖像権への無理解が招く「権利侵害」投稿
「みんなやっているから大丈夫だろう」という安易な考えで、他人の著作物や個人の写真を無断で使用してしまうケースが後を絶ちません。これは、企業のコンプライアンス意識が問われる重大な問題です。
その画像、音楽、本当に使って大丈夫?安易な無断使用
Web上で見つけた素敵なイラストや写真、SNSで流行している楽曲などを、許諾を得ずに自社の投稿に使用していませんか?これらは著作権侵害にあたり、権利者から損害賠償を請求される可能性があります。
法的な問題だけでなく、クリエイターやそのファンから「創作物へのリスペクトがない企業」として厳しい批判を浴び、ブランドイメージを大きく損なうことになります。
画像利用の際の確認フロー
- フリー素材か確認
商用利用可能か、クレジット表記は必要かなど、利用規約を必ず確認する。- 有料素材を購入
権利関係がクリアなストックフォトサービスなどを利用する。- オリジナルで制作
自社でカメラマンやイラストレーターに依頼して制作する。
安易にネット上の画像を拾ってきて使うことは、絶対にやめましょう。
お客様や従業員も対象。許可なき「顔出し」投稿のリスク
著作権と同様に、軽視されがちなのが「肖像権」です。イベントの様子としてお客様が写り込んだ写真を許可なく投稿したり、従業員の写真を本人の明確な同意なく「社員紹介」として使用したりする行為は、プライバシーの侵害にあたる可能性があります。
特に最近では、本人の許可なく顔写真を加工アプリで無断利用されたとしてタレントが被害を訴えるなど、肖像権への意識はますます高まっています。従業員であっても、必ず事前に「SNSに掲載する目的」「掲載期間」「削除依頼の方法」などを明確に伝えた上で、書面やメールなど記録に残る形で使用許諾を取りましょう。
参考: 「流石に許可なしはやばい」ギャルYouTuber、顔写真を加工アプリが無断転載? 「肖像権侵害しまくりやん」
ワースト2:多様性への配慮を欠いた「差別・偏見」投稿
企業には、社会の多様性を尊重し、あらゆる人々に対して公平な姿勢を示すことが求められます。本人に悪気がない「無意識の偏見」に基づいた投稿が、多くの人々を傷つけ、取り返しのつかない炎上につながるケースが増えています。
悪気はなくてもアウト。「無意識の偏見」が透ける表現
「女性だから〇〇」「若いのにしっかりしている」「これだから最近の若者は」といった、特定の属性に対する固定観念(ステレオタイプ)に基づいた表現は、たとえ褒め言葉のつもりでも、受け手によっては不快感を抱くことがあります。
2025年に、ある大手食品メーカーのCMが女性の描き方をめぐって「性的だ」と炎上した事例のように、制作者側が意図しない形でジェンダーに関する固定観念を助長してしまうケースは後を絶ちません。
自社の価値観が社会の常識とずれていないか、常に客観的な視点でチェックすることが重要です。特に、広告やキャンペーンなど、広く発信するものほど、多様なバックグラウンドを持つ人々による多角的なレビューが不可欠です。
炎上必至!政治・宗教・思想などセンシティブな話題
企業の公式アカウントが、特定の政治的・宗教的立場を支持、あるいは批判するような投稿を行うことは、極めてハイリスクな行為です。企業として明確なスタンスが定まっていない限り、これらのセンシティブな話題には触れないのが賢明です。
社員個人の思想信条は尊重されるべきですが、それが企業全体の意見であるかのような誤解を与えれば、異なる意見を持つ顧客を一斉に失うことになりかねません。中立性を保ち、自社の事業や製品・サービスに関する情報発信に徹することが、炎上を避けるための鉄則です。
ワースト1:絶対NG!モラルを疑われる「非常識・不謹慎」投稿
そして、最も罪が重く、企業の信頼を再起不能なレベルまで破壊しうるのが、企業の社会的責任や倫理観そのものが問われる投稿です。これらは単なる「失敗」では済まされず、顧客や社会全体からの厳しい非難に晒されます。
「バイトテロ」だけじゃない。従業員による悪ふざけと内部情報の暴露
飲食店のバックヤードでの不衛生な行為、いわゆる「バイトテロ」は、その典型例です。しかし、リスクはそれだけではありません。職場の備品での悪ふざけ、同僚への誹謗中傷、未公開の新商品情報や、来店した顧客の個人情報をSNSに投稿する行為も同様に致命的です。
未公開の新商品情報を「少しだけなら」と軽い気持ちでSNSに投稿してしまい、その情報が競合他社に渡って、結果として大きな損害につながるケースがあります。こうした行為は個人の問題にとどまらず、情報管理のルール整備や教育・監督体制の不備など、企業側のガバナンスも問われます。
マイナビの調査では、2025年に4社に1社以上(26.3%)がバイトテロを経験しており、決して他人事ではありません。
災害・事件・事故発生時の「不謹慎」な投稿
社会的に大きな災害や事件、事故が発生しているタイミングで、状況を顧みずに普段通りのキャンペーン告知や楽しげな投稿をしてしまう行為は、「不謹慎だ」として厳しい批判の対象となります。これは「不謹慎マーケティング」とも呼ばれ、ユーザーの悲しみや不安に寄り添えない企業という烙印を押されてしまいます。
多くの企業がSNS投稿を自動予約していますが、有事の際にはこの機能が仇となります。災害などの一報に接したら、まず全ての予約投稿を停止し、状況が落ち着くまで情報発信を自粛する。この対応を迅速に行えるかどうかで、企業の危機管理能力が問われます。
よくある質問(FAQ)
Q: 炎上してしまったら、まず何をすればいいですか?
A: まずは状況を静観せず、迅速に事実確認を行うことが最優先です。①何が問題視されているのか、②投稿内容は事実か、③被害者はいるのか、を冷静に把握します。事実であれば、言い訳をせず速やかに謝罪し、投稿を削除または訂正します。対応の遅れは致命傷になりかねません。
Q: 個人のアカウントでの発言も、会社に関係ありますか?
A: 大いに関係あります。プロフィールに会社名を記載していなくても、過去の投稿などから勤務先が特定され、個人の不適切な発言が会社の評判を落とすケースは後を絶ちません。従業員一人ひとりが「会社の看板を背負っている」という意識を持つための、定期的なSNS研修が不可欠です。
Q: ポジティブな内容でも、NGになることはありますか?
A: あります。例えば、競合他社の商品と比較して自社製品の優位性をアピールする際、表現が行き過ぎて誹謗中傷と受け取られるケースです。また、良かれと思って発信した情報が、結果的に誤情報だったということも。常に客観的な視点とファクトチェックを忘れないでください。
Q: 「このくらいなら大丈夫だろう」という気の緩みが一番危ないですか?
A: その通りです。多くの炎上は「これくらいなら」という甘い認識から始まります。特に、SNSに慣れ親しんだ世代ほど、プライベートな感覚で投稿してしまいがちです。企業アカウントの向こう側には、多様な価値観を持つ不特定多数のユーザーがいるということを常に忘れてはいけません。
Q: NG投稿を防ぐために、明日からできることは何ですか?
A: まずは、この記事で紹介したワースト5を社内のSNS担当者全員で共有することから始めてください。その上で、投稿前のダブルチェック体制をルール化するだけでも、多くのミスは防げます。「投稿ボタンを押す前にもう一人に見てもらう」を徹底しましょう。
まとめ
企業SNSのNG投稿は、単なる「失敗」では済まされません。企業の信頼を根底から揺るがし、築き上げてきたブランド価値を一瞬で破壊する力を持っています。
今回ご紹介したワースト5は、私が炎上対策の現場で見てきた「特に罪が重い」ものばかりです。大切なのは、これらのリスクを正しく理解し、「予防」のための仕組みを社内に作ること。
この記事が、皆さんの会社のブランドを守る一助となれば幸いです。SNSリスクに関するお悩みがあれば、いつでもご相談ください。
