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【鎮火のプロが語る】2025年下半期炎上事例から見る企業対応の成否

「もし今、自社が炎上したら、最初の一手を正しく打てる自信はありますか?」

この問いに即答できる広報・リスク管理担当者は、実はそれほど多くないのではないでしょうか。SNSの拡散力が年々増す中、炎上は「起きるかどうか」ではなく「いつ起きるか」の問題になりつつあります。

2025年下半期は、BeRealを起点とした新型バイトテロの頻発、生成AIクリエイティブへの批判論調の変化、SNSのフィルターバブルが正確な世論把握を妨げるなど、炎上リスクの「質」が大きく変わった半年でした。こうした環境変化の中で、対応に成功した企業もあれば、初動の遅れや的外れな謝罪で傷口を広げた企業もあります。

この記事では、2025年下半期の代表的な炎上事例を「企業対応の成否」という視点で分析し、明日の危機に備えるための実践的な教訓をお伝えします。

【この記事の結論】2025年以降の炎上対応 3つの鉄則

  • 鉄則1:新たな炎上リスクを理解する。
    2025年下半期は「BeReal発の新型バイトテロ」「生成AIクリエイティブへの品質批判」「SNSのフィルターバブル」という3つの新たな脅威が顕在化しました。従来のリスク管理体制では対応しきれない、新しい炎上の火種を正確に把握することが第一歩です。
  • 鉄則2:「初動8時間」の対応を制する。
    炎上の成否は、発生から8時間以内の初期対応で決まります。特に「発見後1時間以内の情報保全と報告」「謝罪か静観かの戦略的判断」が重要です。情報空白を作らず、憶測の拡散を抑えるための「ホールディングコメント」も有効な一手です。
  • 鉄則3:「守り」と「攻め」の両輪でブランドを守る。
    鎮火後の「ブランドSEO」対策までが危機管理です。ネガティブな検索結果を放置せず、公式サイトやプレスリリースでポジティブな情報を発信し続けることで、長期的な企業イメージの毀損を防ぎ、信頼を再構築します。
炎上から企業を守る 2025年最新版
炎上対応の鍵は「初動8時間」。謝罪か静観かの判断を誤らず、テンプレ謝罪・情報空白・画像投稿の3大NG行動を避けることが信頼回復の第一歩です。
目次

2025年下半期の炎上トレンド総括|企業が直面した3つの新リスク

2025年下半期の炎上を振り返ると、従来とは明らかに「質」の異なるリスクが目立ちました。株式会社エルテスが2026年2月に発表した「ネット炎上レポート 2025年下期版」でも、顧客や第三者の投稿による炎上が多く見られたことに加え、SNSのAI機能が論調把握を困難にしているという新たな課題が指摘されています。

ここでは、企業が特に注意すべき3つの新リスクを整理します。

BeReal発の新型バイトテロと複数プラットフォーム拡散のリスク

2025年9月から10月にかけて、若者に人気のSNS「BeReal」を発端とするバイトテロが相次ぎました。

くら寿司では来店客が寿司を素手で触ったりなどする迷惑行為の動画が拡散し、ドトールコーヒーではアルバイト従業員がプラスチック製のソフトクリームサンプルで悪ふざけをする画像が問題になりました。ラーメンチェーン「魁力屋」やケンタッキー・フライド・チキンでも同様の事例が発生しています。

参考: くら寿司、SNSの“しょうゆぺろぺろ動画”に声明 「すでに特定済み」 “迷惑行為を把握する環境”も構築済み
参考: バイトテロ発生のドトールが謝罪、経緯説明…使われているのは「プラスティックダミー・サンプル」ソフトクリーム

これらの事例には、共通する新しいパターンがあります。それは「BeRealで撮影→友人限定のつもりで投稿→スクリーンショットがXに転載→爆発的に拡散」という流れです。

BeRealには、従来のSNSとは異なる3つの特性があります。

  • 1日1回ランダムな時間に届く通知から「2分以内」に投稿しなければならないため、深く考える前に撮影してしまう衝動性がある
  • 友だち限定の公開範囲が「身内だけだから大丈夫」という油断を生む
  • 加工・編集ができないため、撮影した瞬間のリアルな状況がそのまま残る

マクロミルの「新成人500人調査」(2008年開始の定点調査)によると、新成人(二十歳の集い対象者)におけるBeReal.の利用率は、2024年1月発表時の16.8%から2025年1月発表時には28.2%へと11.4ポイント増加しており、若年層への浸透が年々高まる傾向にあります。従来のSNSガイドラインではカバーしきれない、BeReal特有のリアルタイム投稿に起因するリスクを、企業は早急に想定に組み込む必要があるでしょう。

ブランドセキュリティの現場にいた経験から言えるのは、監視体制も「マルチプラットフォーム対応」にアップデートすべきだということです。XやInstagramだけを見ていては、BeRealやThreadsなど新しいプラットフォーム発の炎上を見逃してしまいます。

生成AIクリエイティブへの批判論調の変化

2025年は、生成AIを巡る炎上の論調に大きな変化がありました。以前は「AIを使うこと自体」が批判の対象でしたが、2025年に入ってからは「企業の品質チェック体制の甘さ」や「ブランドの文脈との不一致」に批判の矛先が向くようになっています。

象徴的だったのは、文具メーカーのサクラクレパスがスペインのイベントで使用したポスターに、生成AIで作成したビジュアルが使われていたとして批判を受けた事例です。サクラクレパスは「クリエイターを応援する企業」というイメージが強かっただけに、「自社のブランドストーリーと行動がズレている」という点が反発を招きました。

参考: サクラクレパス、“AI疑惑”のポスター撤去へ 「実際のデザインと相違」

また、大手航空会社JALのクレジットカードプロモーションでも、生成AIで作成したと見られる画像に不自然な部分があり、「高品質を売りにするブランドにふさわしくない」として差し替えに至っています。

参考: ポップコーンにストロー…JAL「最高峰のメタルカード」サイトに生成AI画像 「不自然」指摘で謝罪&差し替え

つまり今、企業に求められているのは「AIを使うかどうか」の判断ではなく、「どの場面で」「どのようなチェック体制のもとで」使うかという運用方針の明確化です。生成AI活用ガイドラインの策定は、もはや先進的な取り組みではなく、炎上予防の基本対策と言えるでしょう。

フィルターバブルが企業の論調把握を困難にする時代

2025年下半期に特に注目すべきもう一つのリスクが、SNSのフィルターバブルが企業の炎上対応を難しくしている問題です。

XのGrokをはじめとするSNSのAI機能は、ユーザーの嗜好や思想に近い投稿を優先的に表示します。この仕組みは、炎上の場面では二重の問題を引き起こします。

一つ目は、批判する側が「自分の意見が多数派だ」と錯覚しやすくなること。批判的な投稿が目に入りやすい環境では、実際以上に怒りが増幅され、炎上が過熱しやすくなります。

二つ目は、批判を受ける企業側も正確な論調把握ができなくなること。自社に好意的な投稿ばかりが表示されれば「そこまで深刻ではないのでは」と判断を誤るリスクがあり、逆に批判的な投稿ばかりが目に入れば実態以上にパニックに陥る可能性もあります。

エルテスのレポートでもこの点が明確に指摘されており、「フィルターバブル」が炎上対応に必要不可欠な論調把握の妨げになっていると警鐘を鳴らしています。

炎上対応では「世の中が実際にどう受け止めているか」を正確に把握することが出発点です。SNSのタイムラインだけを頼りにするのではなく、モニタリングツールの活用やシークレットモードでの検索など、フィルターの影響を受けない方法で情報を収集することが大切です。

【成功事例】炎上を最小限に食い止めた企業対応のポイント

炎上が発生しても、対応次第で被害を最小限に食い止めることは可能です。2025年下半期の事例から、対応に成功したケースを見ていきましょう。

「静観」という戦略的選択が奏功したケース

2025年2月、東洋水産の人気商品「赤いきつね」のWeb限定CMが炎上しました。CMでは若い女性がドラマを見ながら赤いきつねを食べるシーンが描かれていましたが、口元のアップや頬を赤らめる演出が「性的だ」として批判を受けたのです。

参考: 「赤いきつねCM」露出ないのに”性的”と炎上のワケ

一方で、「過剰反応ではないか」「単なる表現の違いに過ぎない」という擁護の声も多く、賛否は大きく分かれました。

東洋水産は、この炎上に対して謝罪も動画削除も行わず、冷静な対応を維持しました。結果として、不買運動や深刻な企業不信には発展していません。

ブランドセキュリティの現場を経験してきた立場から、「静観」が有効に機能する条件は以下の3つだと考えています。

  • 自社に明確な過失がない場合(意図的な差別や法的な問題がない)
  • 世論の賛否が明確に分かれている場合(一方的な批判ではない)
  • 風評被害に近い構図で、謝罪が逆に「非を認めた」と受け取られるリスクがある場合

ただし、静観は「何もしない」こととは違います。東洋水産のケースでも、社内では論調のモニタリングを継続し、事態が悪化した場合の対応も準備していたと考えられます。静観はあくまで「戦略的な選択」であり、状況を常に見守り続けることが前提です。

迅速な事実確認と誠実な謝罪で信頼を守ったケース

ドトールコーヒーの対応は、バイトテロ発生後の初動として参考になるケースです。

前述しましたが、2025年9月23日にBeRealに投稿された画像が9月29日にXで拡散し、同社は即座に調査を開始。翌30日には対象店舗と対象者を特定し、10月1日~2日にかけて事実確認を実施、3日に懲戒処分を決定すると同時に公式サイトで謝罪文を公開しています。

参考: ドトールコーヒーショップにおける SNS 不適切投稿に関するお詫びと事実関係のお知らせ

この対応が評価できるポイントは、次の通りです。

  • 発覚から謝罪文公開まで約5日間で完了しており、初動のスピードが速い
  • 謝罪文の中で経緯と事実関係を時系列で明確に説明している
  • 撮影対象が「プラスチック製のダミーサンプル」であることなど、事実と異なる情報の訂正も行っている
  • 懲戒処分の実施と管理体制の見直しという具体的な再発防止策を提示している

一般社団法人日本リスクコミュニケーション協会の大杉春子代表理事によると、SNS時代の炎上では「発生後8時間以内に最初の対応が必要」とされています。ドトールのケースは事実確認に数日を要していますが、その間も状況を注視し、確認が取れた段階で速やかに公表した点が適切でした。

謝罪文に盛り込むべき5つの要素として、私は以下を意識しています。

  • 何に対して謝罪しているかの明確な事実認識
  • 関係者への誠実な謝罪の表明
  • 発生原因の説明
  • 具体的な再発防止策
  • 今後の企業姿勢の表明

これらの要素がすべて含まれていたことが、ドトールの対応を「模範的」と評価できる理由です。

「対話」で批判をファンに変えた攻めの危機管理

2025年には、炎上をきっかけにユーザーとの対話を深め、むしろブランド価値を高めた企業も見られました。

たとえば、SNSでの批判に対して一方的な謝罪文で終わらせるのではなく、ユーザーの声に真摯に耳を傾け、改善策を具体的に公表し、その後の実施状況を定期的に報告するという「攻めの危機管理」を実践するケースが増えています。

炎上は最悪の事態ですが、正しく対応すれば企業の誠実さを証明するチャンスにもなります。「怒りの声に耳を傾ける姿勢」「具体的で実行可能な改善策」「透明性のある進捗報告」、この3つが揃うと、批判していた人が「この会社は信頼できる」とファンに変わることもあります。

静観は「何もしない」ではなく、モニタリングを続けながら判断する戦略的選択。謝罪文は5要素を外さず、テンプレ流用と画像投稿は厳禁です。

【失敗事例】対応を誤り傷口を広げてしまった企業の教訓

一方で、対応を誤ったことで事態を悪化させてしまった企業もあります。ここでは過度に企業を批判するのではなく、「なぜ失敗したのか」の構造的な原因を冷静に分析します。同じ轍を踏まないための教訓として読んでいただければ幸いです。

テンプレ謝罪と当事者意識の欠如による二次炎上

炎上後の謝罪で最も危険なのが、「世間の怒りのポイントと謝罪のポイントがズレる」ことです。

たとえば、フランチャイズ店舗での問題に対して本部が「フランチャイズ店舗に関する書き込みについて」という形で声明を出すと、消費者からは「責任を加盟店に押し付けている」「トカゲの尻尾切りだ」と受け取られるリスクがあります。世間が怒っているのは「ブランド全体としての姿勢」なのに、企業側が「あくまで個別の店舗の問題」として対処しようとするズレが、二次炎上の火種になるわけです。

謝罪文のチェックで見落としがちなポイントとして、私が現場で感じてきたのは次の3つです。

  • 主語が曖昧になっていないか(「関係者」「一部の」といった逃げの表現)
  • 消費者が感じている怒りのポイントを正確に理解しているか
  • 再発防止策が具体的か(「教育を徹底します」だけでは不十分)

テンプレートの謝罪文をそのまま使うことの危険性は、個々の炎上の文脈に合わない画一的な対応が「当事者意識の欠如」と映ることにあります。

初動の遅れと情報空白が招いた憶測の暴走

炎上が発生したにもかかわらず、企業から数日間、何の反応もない。この「情報空白」の時間は、憶測やデマが拡散する絶好の環境を作ってしまいます。

2025年初頭にも、すき家の鳥取県の店舗でみそ汁にネズミが混入した事案が発生し、約2ヶ月間公表されなかったことから『隠蔽ではないか』という疑惑が広がりました。

参考: すき家に関する一部報道について(第2報)

こうした状況を防ぐために有効なのが「ホールディングコメント」です。これは「現在、事実関係を確認中です。詳細が判明次第、改めてご報告いたします」という形で、企業が事態を認識していることを早期に伝えるコメントのことです。

完璧な調査結果を出すまで沈黙を守るよりも、「認識しています。調べています」というメッセージを出すだけで、憶測の暴走をかなりの程度抑えることができます。

情報空白の時間に比例して、信頼回復にかかるコストは大きくなっていきます。これは私が現場で何度も実感してきた事実です。

謝罪文を画像で投稿し「隠蔽」と疑われたケース

企業の謝罪対応で意外と見落とされがちなのが「謝罪文の公開形式」です。

謝罪文をテキストではなく画像ファイル(JPEGやPNG)でSNSに投稿した企業が、「コピペで拡散されるのを防ごうとしている」「検索エンジンにヒットしないようにしている」とユーザーに疑われ、さらなる批判を浴びるケースがありました。

ブランドSEOの知見がある立場から言うと、謝罪文の公開方法として推奨されるのは以下の形式です。

公開方法メリットデメリット
公式サイトにテキストで掲載検索エンジンにインデックスされる、透明性が高い更新に少し時間がかかる
SNSにテキストで投稿即時性が高い、拡散されやすい文字数制限がある
画像ファイルで投稿レイアウトを統一できる検索に引っかからない、隠蔽を疑われるリスク
PDFで掲載書面としての正式感があるモバイルでの閲覧性が低い

最も推奨されるのは、公式サイトにテキスト形式で掲載し、そのURLをSNSで共有する方法です。検索結果にも正しく反映され、企業として誠実に情報開示している姿勢が伝わります。

炎上対応の成否を分ける「初動8時間」の鉄則

ここまで成功事例と失敗事例を見てきましたが、両者を分ける最大の要因は「初動」にあります。ここでは、炎上を発見してからの具体的なアクションを時系列で整理します。

発見から1時間以内にやるべき3つのアクション

炎上を検知した直後に行うべきことは、大きく3つです。

事実関係の確認開始と情報保全

問題となっている投稿のスクリーンショットを保存し、関連する投稿やリプライの内容を記録します。投稿が削除される前にエビデンスを確保することが重要です。

社内エスカレーション

上司、危機管理チーム、法務部門へ速やかに報告します。「自分で対処できる」と判断して一人で抱え込むのが、最も危険なパターンです。

自動投稿の即時停止

予約投稿やキャンペーン投稿がスケジュールされている場合は、即座に停止します。炎上中にプロモーション投稿が流れると「空気が読めない」として批判が加速します。

特にSNS運用を外注している場合や、複数の担当者で運用している場合は、「誰が最初に検知し、誰にエスカレーションするか」のフローを事前に決めておくことが不可欠です。

謝罪か静観かの判断フレームワーク

初動の中で最も難しいのが、「謝罪すべきか」「静観すべきか」の判断です。以下のフレームワークを参考にしてください。

  • 自社に明確な過失がある場合 → 速やかに謝罪・訂正を行う
  • 賛否が分かれている場合 → モニタリングを継続しながら戦略的に静観する
  • 事実無根の批判の場合 → ホールディングコメントを出し、事実確認を進める
  • 名誉毀損に当たる場合 → 法的措置の検討を視野に入れる

現場の感覚としては、90%以上のケースで最初の判断が最終結果を左右します。だからこそ、平時から「こういう場合はこう判断する」というシミュレーションを社内で行っておくことが極めて重要です。

二次炎上を防ぐ謝罪文の書き方5つのポイント

謝罪が必要と判断した場合、以下の5つのポイントを押さえることで二次炎上のリスクを大幅に下げることができます。

何に対して謝っているかを明確にする

「ご不快な思いをおかけしました」という曖昧な表現ではなく、具体的な問題点を認識していることを示します。

事実を客観的に伝える

何が起きたのか、時系列で正確に説明します。事実の隠蔽や矮小化は、発覚した時点で致命的なダメージになります。

具体的な再発防止策を示す

「教育を徹底します」ではなく、「SNSガイドラインを改定し、全従業員を対象とした研修を○月までに実施します」など、具体的かつ検証可能な内容を提示します。

テキスト形式で公開する

前述の通り、画像ファイルでの謝罪文公開は隠蔽を疑われるリスクがあります。

オリジナルの文面で個別対応する

テンプレートの流用は「使い回し」と見抜かれ、当事者意識のなさを批判されます。

参考として、謝罪文の基本構成を示します。

「【冒頭】何についての謝罪か→【事実経緯】時系列での説明→【原因】なぜ起きたか→【対処】何をしたか・するか→【再発防止】今後どう変えるか→【結び】改めての謝罪と決意表明」

この構成をベースに、自社の状況に合わせてカスタマイズすることが大切です。

炎上後の検索結果対策|ブランドSEOで企業イメージを守る方法

多くの炎上対策の記事は「初動対応→再発防止」で終わりますが、実は炎上後にもう一つ、見落とされがちな重要な課題があります。それは、検索結果への影響です。

炎上が検索結果に与える影響とは

企業名でGoogle検索をした時に、炎上に関するニュース記事やまとめサイトが上位に表示される。これは、炎上そのものが鎮火した後も、長期にわたって企業に影響を及ぼし続けます。

検索結果は「企業の玄関」です。採用候補者は応募前に企業名で検索しますし、営業先の担当者も取引前に検索で情報収集します。既存の顧客や株主も、何かの折に検索するでしょう。その時にネガティブな記事が目に入れば、直接的なビジネスへの影響は避けられません。

私が入社3年目に担当した案件では、ある中堅企業の検索結果にネガティブな情報が上位表示されており、採用応募数の減少や営業の受注率低下といった深刻な影響が出ていました。

「守り」のブランドSEO:ネガティブ情報の検索順位を下げる

ブランドSEOとは、企業が管理するコンテンツを適切に配置することで、検索結果をクリーンな状態に保つ手法です。「逆SEO」という言葉で知られることもありますが、エルプランニングが実践しているのは、ネガティブ情報を「消す」のではなく、ポジティブなコンテンツの上位表示によって相対的にネガティブ情報の順位を下げるという正攻法のアプローチです。

具体的には、

  • 公式サイトのコンテンツ充実化
  • プレスリリースの定期配信
  • SNSアカウントの最適化
  • 採用ページやCSR情報の充実

など、企業自身が発信できるコンテンツを戦略的にSEO対策していきます。

この手法は即効性があるわけではありません。しかし、正しい情報を適切に発信し続けることが、長期的にブランドを守る最も確実な方法だと、4年間の実務経験を通じて確信しています。

大切なのは「予防」と「継続的な監視」です。炎上が起きてから慌てて対策するのではなく、平時からポジティブなコンテンツを発信し続け、検索結果を定期的にチェックする習慣を持つことが重要です。

「攻め」のレピュテーション管理:ポジティブ情報で信頼を再構築する

ネガティブ情報の順位を下げるだけでなく、積極的にポジティブな情報を発信して企業の信頼を再構築していくことも重要です。

  • 自社の理念や社会貢献活動の紹介記事
  • 顧客の声やインタビューコンテンツ
  • 製品・サービスの開発秘話やこだわり
  • 社員のインタビューや働き方の紹介

こうしたコンテンツを継続的に発信することで、仮に過去の炎上に関する記事が残っていても、「その後、この企業はこんなに誠実に取り組んでいるのだ」という印象を与えることができます。

私がブランドセキュリティ部門から現在のコンテンツマーケティングチームに異動したのも、「守り」だけでなく「攻め」のブランディングに貢献したいと考えたからです。企業のブランドを守り育てるには、この「守りと攻めの両輪」が欠かせません。

よくある質問

Q: 企業が炎上した場合、最初の対応は何時間以内にすべきですか?

炎上発生後8時間以内に最初の対応を決定・実行することが推奨されています。理想的には、炎上を発見してから1時間以内に社内エスカレーション(上司、危機管理チーム、法務への報告)を完了し、初期方針を決定すべきです。

まず事実確認を開始しつつ、自動投稿を停止し、必要であればホールディングコメント(調査中であることを伝えるコメント)を発信しましょう。情報空白の時間が長いほど憶測が広がり、事態収拾のコストが増大します。

Q: 炎上時に謝罪すべきか静観すべきか、どう判断すればいいですか?

判断の基本は「自社に明確な過失があるか」です。過失がある場合は速やかに謝罪・訂正を行います。一方、賛否が分かれている場合や根拠のない批判の場合は、戦略的に静観することが有効なケースもあります。

東洋水産のCM事例のように、謝罪も削除もせず冷静に対応を維持した結果、不買運動に発展しなかったケースもあります。ただし、静観する場合も必ずモニタリングを継続し、事態の推移を見守ることが重要です。

Q: 謝罪文で二次炎上を起こさないためには、何に気をつけるべきですか?

最も重要なのは「世間の怒りのポイントと謝罪のポイントをズラさない」ことです。テンプレートの謝罪文に飛びつかず、具体的に何に対して謝っているかを明確にしましょう。また、謝罪文はテキスト形式で公開すること(画像NG)、オリジナルの文面で作成すること(テンプレNG)、再発防止策を具体的に示すこと、説明なく投稿を削除しないことに注意が必要です。

Q: 炎上後に企業名で検索するとネガティブ情報が上位表示されます。対処法はありますか?

「ブランドSEO」と呼ばれる手法が有効です。企業のポジティブな情報(実績紹介、顧客の声、CSR活動など)を継続的に発信し、SEOを意識して上位表示を狙うことで、ネガティブ情報の相対的な順位を下げることができます。即効性はないものの、正攻法で信頼を積み上げることが長期的にブランドを守る最善策です。

自社での対応が難しい場合は、WEBブランドセキュリティの専門企業への相談も選択肢の一つです。

Q: 2025年下半期に特に注意すべき新しい炎上パターンはありますか?

2025年下半期で特徴的だったのは3つです。1つ目はBeReal経由のバイトテロで、「2分以内に投稿」というルールと友だち限定の安心感がバイトテロを誘発しています。2つ目は生成AIクリエイティブへの批判で、AI活用自体ではなく企業の品質チェック体制の甘さに批判がシフトしました。3つ目はフィルターバブルによる論調把握の困難化で、SNSのAI機能が正確な世論把握を妨げる新たなリスクとなっています。

Q: 生成AIを使った広告やコンテンツが炎上した場合、どう対応すべきですか?

まず事実確認として、AIで生成した部分を特定し、問題の所在を明確にします。その上で、不適切だった場合はコンテンツの差し替え・削除と謝罪を行います。重要なのは、今後の生成AI活用方針(人の目によるレビュー体制の構築、AI使用場面の明確化など)を再発防止策として示すことです。

2025年のトレンドとして、「AIで作ったこと自体」よりも「品質チェック体制の不備」が批判される傾向にあるため、対応もその点に焦点を当てましょう。

Q: 小規模な炎上でも対応すべきですか?自然鎮火を待つのは危険ですか?

小規模な炎上であれば自然鎮火する可能性もあります。ただし、放置が推奨されるわけではありません。必ずモニタリングを継続し、拡散の兆候がないか見守ることが重要です。BeRealのスクリーンショットがXに転載されるなど、別プラットフォームへの飛び火がきっかけで急拡大するケースもあるため、早期発見の仕組みを整えておくことが大切です。

まとめ

2025年下半期の炎上事例を振り返ると、対応に成功した企業と失敗した企業の明暗を分けたのは、次の3つのポイントでした。

  • 初動のスピード → 8時間以内の対応が、その後の展開を大きく左右する
  • 謝罪(または静観)判断の的確さ → 自社の過失の有無を冷静に見極め、適切な対応を選択できるか
  • 誠実で一貫したコミュニケーション → テンプレ対応ではなく、個々の状況に向き合った真摯な姿勢

炎上は「起きないこと」が最善ですが、起きてしまった時にいかに対処するかで企業の真価が問われます。そして、炎上後の検索結果対策まで含めた「予防→検知→鎮火→信頼回復」の全フェーズを見据えた体制構築こそが、これからの企業に求められる危機管理の形です。

まずは自社のSNSガイドラインの見直しや、炎上対応シミュレーションの実施から始めてみてはいかがでしょうか。BeRealなど新しいプラットフォームの追加、生成AI活用方針の策定、フィルターバブルを考慮した監視体制の構築など、2025年下半期の教訓を踏まえたアップデートが必要です。

ブランドの「守り」と「攻め」、その両輪を回し続けることが、これからの時代に求められる企業の姿勢だと確信しています。

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